原文:ドキュメンタリー・ディレクター 伊藤めぐみ
要約・補足:加藤
◆今何が起こっているのか?
>10月09日 トルコ軍がシリア領内のクルド人支配地域に侵攻し攻撃をはじめた。
・トルコ当局は「平和の泉作戦」と名付けて軍事作戦を開始。
・ツイッターで10日に181箇所に空爆&地上戦などで攻撃したと発表。
・シリアのテルアビヤドとラスアルアイン近郊の4カ所から越境。
・コバニやカミシリなども攻撃。
・攻撃開始から”3日間ですでに10万人が避難民”として家を追われた。
・200万人以上が死亡。
・今後220万人が住む地域に攻撃の可能性。
・インターナショナル・レスキュー・コミティー(IRC)などのNGO
・最大30万人が避難民となる可能性を指摘。
◆なぜトルコはシリアのクルド人地域を攻撃するのか?
>トルコが主張する目的は2つある。
(1)国境地域に「テロの回廊が構築されることを防ぐ」ため。
・「シリア民主軍」(SDF)を構成するクルド人武装組織
「クルド人民防衛部隊(YPG)」を攻撃するため。
<トルコ>
・長年に亘り国を持たない世界最大の少数民族と称される
クルド人に対する弾圧を行って来た。
・トルコ国内のクルド人武装勢力であるクルド労働者党(PKK)
を「テロ組織」と認定。
・そのPKKと同じ組織だとするシリアのクルド人武装勢力YPGを
攻撃することでクルド人勢力を抑えつけようとしている。
・YPG…イスラム国掃討作戦で勢力拡大。
・地上部隊を送りたくない米国をはじめとする有志連合国は
YPGと協力関係を結んでシリア民主軍(SDF)という部隊を
構成。
・武器や資金などを提供してきてイスラム国の掃討作戦を実施。
⇔トルコは力を増したクルド人を押さえつけたい狙い。
(2)シリア内の国境沿いの地域に460キロ・幅32キロの「安全地帯」
と名付ける場所をつくりトルコにいるシリア難民を送り返すという計画
のため。
・トルコ国内に溢れるシリア難民を帰還させるため。
・トルコとシリアの間の地域からクルド人を追い出すため。
⇒クルド人の勢力を削ぐ。
・「安全地帯」に帰還させられるシリア難民はアラブ人。
・多くがその土地出身者ではない。
・「帰還」させた際にその対象地域に住んでいた人々の
大規模な追放と土地の収用が行われることも予想される。
◆なぜ今、攻撃が始まったのか?
>トランプ大統領の判断が大きく影響。
・米国政府はシリア内のイスラム国などに対する掃討作戦のため
米軍を駐留させクルド人武装勢力YPGなどともにシリア民主軍(SDF)
を構成していた。
・しかし…シリアでの戦争はまだ続いているもののイスラム国との
大規模な戦闘は終了。
→昨年の12月にトランプ大統領がシリア領内のクルド人支配地域
から米軍を撤収する予定であることを発言。
>10月06日
・トルコのエルドアン大統領とトランプ大統領の電話会談。
・エルドアン大統領におそらくうまく乗せられた形で…
・トランプ大統領
(1)米軍撤退。
(2)トルコによる軍事作戦に関与しない。
→この決定は突然のことで共和党内からも中東情勢を不安定にすると
批判がなされた。
→翌日7日に米軍は撤退。
→その直後の9日にトルコ軍はシリア内に侵攻。
◆今後、何が起こりうるのか?
>まずは多くの難民、避難民が発生するだろう。
>イスラム国の活動が活発化する恐れもある。
・イスラム国の戦闘員&その家族の多くはクルド支配地域で拘束されている。
・1万2千人のイスラム国元戦闘員と5万8千人の家族がいる。
・米軍が撤退。
→これまでイスラム国兵士の管理を担当してきたシリア民主軍(SDFへの攻撃。
→戦力が対トルコに向けられ警備が手薄。
→戦闘員が逃亡する恐。
◆なぜこの事態を止められないのか?
>トルコのこの侵攻に対してヨーロッパ各国には強く出られない理由がある。
・難民問題だ。
<エルドアン大統領>
「ヨーロッパがこの軍事作戦を「占領」というのであればヨーロッパに難民360万人を送り込む。」
・アメリカはYPGに肩入れしたがもともとクルド人勢力の地位向上を支援しようとしていたわけではない。
・すでに多くの一般の住民が犠牲になり、このままでは今後も増える続けることになる。
・ここに絡むロシアの戦略はまた次回に。
小田原支部 加藤「